おちが衝撃的・怖いのは怪談だけじゃない

あだな ≪くれきん≫

私がまだ20代だった頃の話。 昼間の事でした。
「ピンポーン!」
基本は、アポなし訪問には居留守を使うんです。 以前は出ていたのですが、昼間は宗教の勧誘やセールスの人が大半なので出るのが面倒くさくなったのです。
「しつこいなピンポン3回目・・・」
当時住んでいたところは、モニターフォンではないので相手を確認できませんでした。 始めは無視していました。 けれど今回の訪問者は一向に帰る様子がなく、玄関を空けるほどではないけど気になる・・・。 好奇心からドアの覗き窓で訪問者を見てみることにしました。 のぞき窓を見てみるとそこには 「女の人・・・か」 うわぁあ・・セールスではなさそうだけど、なんか・・・怖っ! 顔は俯いていたので分かりませんでしたが、真っ赤なワンピースが印象的でした。 覗き窓を確認した後、訪問者に気づかれないよう
「そろー そろり そろぉーーり」
ゆっくりゆっくり忍び足で部屋に戻ろうとした時
「コンコン・・・」
玄関のドアをノックする音が聞こえました。
「いるんでしょ・・・」
初めて聞く知らない声。 酒焼けしたようなしゃがれた声でした。 えっ?! あまりにもタイミング良く話かけられ・・・ まるで私がいることを分かっているようでした。 独り言のように小さく呟いた訪問者。 得体の知れない気味悪さを覚えました。 でもふと思ったんです。やましいこともないし、そもそも私の家なのになんで私コソコソしてるんだろう・・・と。 さすがに玄関を開ける勇気はなかったのですが、インターフォンに出てみることにしました。
「はい」
「こんにちわ 突然ごめんね 私ね、ここのマンションの508号室に住んでるの」
この時初めて508号室の住人と話しました。
私の部屋は510号室。 ちょっと前にここに引っ越してきたんです。 508号室にも引っ越しの挨拶はしに行ったのですが返答がなく、それからも顔を合わせることもないまま、どんな人が住んでいるか知りませんでした。
「それでね・・・お願いがあるんだけれど あなたの部屋に入らせてほしいの」
「?! あの・・・どうして私の部屋に?」
「隣も確認したのよ、でも不在みたいでいないから、あなたのところに来て頼んでるんじゃないの 私ね今すぐに家に入りたいの、でも鍵をどこかに落としてしまって」
「ええ! そうなんですか! 鍵をなくしたのは困りましたね! どこで落としたのかが分かれば、最寄りの交番に届け出があるかもだけど」
「そうね・・・でも私、あなたの部屋のベランダを渡って私の部屋にはいろうと思って」
ええ?! そんなスパイダーマン的な感じ?! 危険だよ~
「それはやめたがいいですよ~! ここ5階だし、もし足を踏み外したら大変だし・・・それに私のベランダからだとお隣さんのベランダを通る形になりますよね? それはまずいんじゃないかな。 まずは管理会社に鍵のことを問い合わせした方がいいと思います。 すみません、お力になれなくて」
何もしてあげられなくて申し訳ないなと思ったのですが、私のベランダから案はあまりにも危険なのでこういう言い方しかできませんでした。 通話を終えしばらくたってからのことです。 ん? 何事? 事件? 事故? サイレンの音が気になりベランダに出ると、パトカーが複数台通り過ぎて行きました。 そして上を見ると 何でだ? あのヘリ、ずっとこのマンションの上にいる・・・。 しばらくサイレンの音やヘリの音がうるさかったのですが、夕方には静かになりました。テレビのニュースにも事件や事故で話題も出ず、たいしてこの時は気にしませんでした。 数日経ったある日、マンションの管理会社から電話がかかってきました。
「放置自転車の問題で、今度から自転車にはシールを貼ってもらうことにしましたのでご連絡しました。駐車シールは後日送付します。シールを貼っていない自転車は撤去の対象になりますので必ず貼って下さいね」
「そうなんですね、わかりました。あっ!・・・そういえば508号室の方がこの前うちに鍵をなくしたと言われたんですけど鍵をなくした場合って管理会社に連絡したらいいんですかね?」
「508ですか?・・・鍵を紛失した件では電話はかかってきてないですよ」
「・・・そうですか」
鍵屋さんにでも頼んだのかな・・・。
「あの・・・いつ鍵をなくしたと言われたんですか?」
「えっと2日前です」
「それはおかしいですね・・・その部屋は空室ですよ」
エレベーターが508の逆の位置にあったので508を通ることって挨拶をしに訪れた以来なかったのです。 てっきり誰か住んでいると思っていたのに空室だったなんて・・・私の勘違いだったのか? 管理会社の電話を終えて出かけようと外に出た時のことでした。 ちょうどお隣の509の人に会い、私より長く住んでいる509の人なら508のことを何か知っていると思ったんです。
「・・・あの! ちょっと聞きたいことあって・・・ 508号室なんですけど」
「508号室?」
「508号室ってカーテンとかあって生活感あったんで・・・誰か住んでるのかと思ってたんですけど・・・」
「ああ・・・この前の日曜日かな? 508で引っ越しの作業してて、その親族の人から退去するって聞きましたよ」
この前の日曜日・・・私は泊りで土曜日から居なかったときか あの女性が来た日は水曜日、その時には引っ越しが済んでて508は空室だった・・・。
「508の人ね、入院してたみたいで事故か病気か詳しくは聞いてないけど、ずっと一人暮らしだったみたいで、でも誰も住んでないのに家賃払い続けるって勿体ないもんね~。 もうすっごくよく喋る人で長い時間話されてましたよ~。 あっ! そうそう! この前の水曜日の話なんですけど、ちょっとした事件が起きたみたいで あれここのマンションのすぐ近くで不審者が出没したって!」
「ええ! 不審者?! ここ小学校も幼稚園も近くにあるし、怖いですね だからあんなにパトカーの音がうるさかったんだ」
「そうなんですよ~!私の姉の子どもがここの近くの小学校に通ってて 私この日仕事でいなかったんだけど、これ姉から来たメール」
「ありがとうございます。この不審者一体何して通報され・・・ え?」
あの日インターフォンを鳴らした女性は、このマンションの周辺で刃物を持ってうろついているところを見られ、近所の人が通報したそうです。その後銃刀法違反でその日のうちに現行犯逮捕されたそうです。誰も被害に遭わなかったことが不幸中の幸いでした。 しかし、私は一つ勘違いをしていました。 あの日訪れたワンピースの女性は・・・

本当は女装した男だったのですー!

出典 BIGLOBEニューストレンド

 

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