≪くれきん≫
やっぱり宮部ワールドにはどんどん引き込まれてしまいます。 小生が宮部さんのどの作品でも好きな原因は、サスペンスから流れるようにファンタジーに入って行くような独自の文体にあるのだと思います。 物語の前半は主人公で大学生の三島孝太郎がアルバイト先のネット警備会社「クマー」で知り合った先輩(森永)の行方を探すところから物語が動きだします。 書き出しに登場する幼い女の子が見つめる「動くガーゴイル像」、「学校裏サイトの不条理ないじめ」、全国で発生する「連続切断魔」による殺人事件、森永が追っていた「ホームレス失踪事件」とサスペンスの匂いがプンプンするのですが、気が付けば前作の「英雄の書」の世界観(ダークファンタジーかな)に引き込まれていきます。「英雄の書」を読んでない方でも、本書は独立した物語となっていますので、楽しめると思います。 この作品は現代のネット社会の歪みを提起しながら、人の言葉が紡ぐ物語が世界を形作っているのだと読者に語りかけています。 宮部さん曰く、「本作が語っている物語の嘘に、一抹の(真実らしさ)が備わっているとしたら、それは皆さまのご助力のおかげです」
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